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インタビュー

霧馬山(前編):初日から好調を実感 初優勝を果たした3月場所を振り返る

2023年4月21日 11:00配信

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日本の伝統文化を色濃く継承する、華やかな大相撲の世界。力士たちは皆、なぜこの道を志し、日々土俵に向かっているのだろうか。本連載コラムでは、さまざまな人気力士たちにインタビューし、その素顔を探っていく。

今回ご登場いただくのは、先の3月場所で見事初優勝を果たした関脇・霧馬山関。千秋楽では本割、優勝決定戦を2回勝っての逆転優勝。場所前から調子がよかったと語るが、自身の15日間を振り返っていただいた。

聞き手・文・撮影/飯塚さき

初日から好調を実感した3月場所

――あらためまして、初優勝おめでとうございます!現在の心境はいかがですか。

霧馬山関(以下、「」のみ)「ありがとうございます。でも、本当に優勝したのかな、いつ優勝したかなってくらい、忘れちゃいました。うれしさも、千秋楽だけでした」

――場所前の調子はいかがでしたか。

「大阪に入ってからは、出稽古には行けなかった分部屋の皆さんと一緒に力を合わせてやっていました。調子はすごくよかったです」

――初日の阿炎関戦は白星発進でした。

「毎場所初日は緊張もありますが、そのなかで阿炎関にいい相撲で勝てたので、気持ちも体も調子がいいなと思えました。次の日は正代関に負けたんですけど、攻められたのでよかったなと思いました」

――8日目からは千秋楽まで勝ちっぱなしでした。好調の要因は。

「一日一番を大事にしっかり相撲を取ろうって、その気持ちでいきました。初場所もこんな感じでしたね。勝てたのはとにかく稽古のおかげ。自分のやるべきことをちゃんとやっていたので。それ以外何もないです」

逆転優勝の千秋楽を振り返る

――優勝を考えたのはどのタイミングでしたか。

「あんまり考えませんでした。そんなに緊張はなかったんですよね。いつも通り、やるべきことをやって、今日勝ったら優勝決定戦とかも考えず、一日一番の最後の日だから思いっきりいくって決めていきました。いままで12勝っていう成績はなかったので、まずは本割の一番をちゃんと取りたいなと。勝った後にはもうものすごくうれしくて、運がついているなって思いました。かなり押されて土俵際まで行ってしまったんですが、最後はよく残ったと思います」

――同じ相手と2番取るのは、やりにくかったですか。

「大栄翔関は押し相撲で強いし、どんどん前に攻めてくるので、すごく嫌な相手でした。どういう立ち合いで行くか、朝稽古場で鶴竜親方に話したり若い衆相手に試させてもらったり、結構考えていったんですけど、その通りにはいきませんでした。本当は立ち合いでつかまえにいったんだけど、つかまえられなかったんです」

――しかし、体をうまくしならせて残り、高い対応力を見せつけました。

「やっぱりそれができるようになるには稽古しかないので、ちゃんと稽古できていたと思います」

――決定戦で勝ったときはどう思いましたか。

「自分ではどうなったのかわからなくて、審判長のアナウンスを聞いて、わあっと思いました。本当に優勝したのかなって。うれしい気持ちが下からグッと湧き上がってきましたね」

――ご自身のなかで、よかった一番と課題が残る一番はどれですか。

「よかったのは千秋楽。2番取って勝ちましたので。逆に、負けた相撲はもっとこうすればよかったと思うことがいろいろあります。例えば、琴ノ若関戦は立ち合いからもろ差しに入られてしまいました。この1年くらいずっと負けていない相手だったし、相手はもろ差しで来るってわかっていたのに入られてしまったから、反省しました。正代関戦もそうですね。ギリギリまで攻められたのに、最後に自分の悪い癖が出てしまった。でも、そういう悪かったことは直していけばいいと思っています」

目指すのは「前に出る相撲」

――目指している相撲は

「一番は、当たって頭をつけて、まわしを取って前に出る相撲なんですが、最近は突き放していくことも多くなってきました。やっぱり毎回思った通りにはいかないので、相手にタイミングを合わせたり、自分の体に任せたりしています。いつも自分の体がそう言っているんで」

――自身の体の声を聞いているんですね。関取は運動神経が抜群なので、それを生かすためにはより前に出る力が大事になってくると思います。そのためにはどんな稽古をしていますか。

「稽古場でどんどん足を出して前に出ること。そしたら力がつくので。昔、稽古場で投げてケガしたこともあるので、稽古場では投げはしません。その代わり、とにかく前に前に出ることを意識しています」

――親方衆からはどんなアドバイスをもらっていますか。

「立ち合いとその後の流れで、例えばまわしを取って頭つけたり、その後取られたら切ったり。師匠(元大関・霧島)と鶴竜親方は、自分の悪いところをたくさん言ってくれます。去年の九州場所では、前に出ていても自分で引いてしまう相撲が何回もあったんで、鶴竜親方に『怖がらずに前に出ていけ。それで負けてもいいんだよ』と言われて、すごく自信になりました。親方衆は、いつもものすごい大事なことを教えてくれます」

(第50回・後編へ続く)

【プロフィール】

霧馬山鐵雄(きりばやま・てつお)

1996年4月24日生まれ。モンゴル・ドルノドゥ出身。柔道経験があり、大会で日本各地に訪れたことがあったが、2014年に未経験ながら陸奥部屋で大相撲の体験入門のため来日。師匠の陸奥親方に声をかけられ、2015年5月場所に初土俵を踏む。3年後に幕下優勝ののち、2019年3月場所で新十両に昇進。翌2020年1月場所で新入幕を果たす。2021年11月場所で新三役の仲間入りを果たし、新関脇となった先の3月場所で、トップを走っていた大栄翔を本割、優勝決定戦で下し、逆転。自身初の優勝を果たした。身長186センチ、体重140キロ。得意は左四つ、寄り、投げ。

【著者プロフィール】

いいづか・さき

1989年12月3日生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーランスのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)、『IRONMAN』(フィットネススポーツ)、Yahoo!ニュースなどで執筆中。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』(ホビージャパン)。

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