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力士の横顔 第2回:嘉風(後編)

2019年7月11日 11:00配信

日本の伝統文化を色濃く継承する、華やかな大相撲の世界。力士たちは皆、なぜこの道を志し、日々土俵に向かっているのだろうか。さまざまな人気力士たちにインタビューし、その素顔を探っていく。

今回は、嘉風雅継関のインタビュー後編。日々の生活やコンディショニングに加え、相撲界への思いについても伺った。

(聞き手・文・撮影=飯塚さき)

食事と休養は大切なコンディショニング

――今回は少し、相撲とは離れて日々の生活について伺います。まず、コンディショニングにおいて、日々気を付けていることはなんでしょうか。

嘉風関(以下、「 」のみ)「一番は食事です。力士にとって、食事は資本となる体をつくるためのものですからね。毎日体重と体形を見て、必要と思えば炭水化物を少し制限することもありますが、基本的にはタンパク質多めの食事を心がけています。お酒はもともと飲まないし、最近は体調管理のために夜食も全く食べなくなりました。多くの力士は、稽古前に朝食をとらないのですが、僕の場合、稽古のない日は必ず朝食を食べて、稽古がある日でも、スムージーやプロテインを飲んでから部屋に向かいます。」

――やはり、力士にとって食事は大切ですね。プロテインなどのサプリメントは、よく飲まれるのですか。

「サプリメントをとる回数は、意識的に増やしています。稽古中には、アミノ酸やBCAAといった回復系のサプリメント。11時の昼食と18時の夕食の間には時間が空いてしまうので、15~16時に補食のプロテインやサラダチキンをとることで、エネルギー不足を回避しています。稽古の有無にかかわらず、普段からビタミン類もよく飲みますね。」

――ケガなどの治療や、体のメンテナンスに関してはいかがですか。

「体が痛くなる前に治療院でケアをするようにしています。電気治療、超音波、マッサージ、骨格矯正などをしてくれるところです。昔はケガしたときにしか治療に行きませんでしたが、若いときはしていなくても気にならなかったことを、今は積極的にしています。年を重ねてからは、ケガの対処ではなく、予防に目が行くようになりました。どこかが痛いと、やる気のギアが入らないからです。かといって、治療そのものにすごく凝っているわけではありません。その辺りは、本当に感覚で生きているので。」

――嘉風関は、寝具メーカーの広告塔になるほど睡眠の質にこだわっています。日々の睡眠はバッチリですか。

「十分とっています。昼寝を入れたら8時間くらいです。最近、自宅用のマットレスを替えました。リバーシブルになっていて、両面で硬さが違います。僕が使っているのは、『硬め』と『やや硬め』。両方試した結果、どちらでもよく寝られましたが、普段は硬いほうで寝ています。家のものも持ち運び用のものも、素材は全部一緒です。自分に合ったマットレスを使うことで、睡眠の質は格段によくなりました。入眠や目覚めがスムーズになっただけでなく、朝起きたときに体のどこかが痛い、ということもなくなったんです。長く相撲を取り続けるためにも、睡眠の改善はとても大きかったと思っています。」

――力士だからこそ送っている、相撲のための生活は何かありますか。

「一般の人でもしている方はいるでしょうが、ジムでトレーニングはしています。パーソナルトレーナーをつけているので、メニューは彼に任せています。例えば、今日は上半身の日だったのですが、筋肉痛が残っていたのでアプローチを変えてもらいました。基本的なことですが、疲労を残さないためにトレーニング前後にストレッチをすること、トレーニング中にはクレアチン(ワークアウトドリンク)を飲むことを心がけています。」

素直で向上心のある子が角界でも育っていく

――では、昨今の相撲界について伺います。嘉風関が、今期待している若手力士はいますか。

「弟弟子の友風は、向上心があっていいと思います。わからないことがあると、なんでもよく聞いてきてくれるんです。それくらい素直じゃないと、伸びていきません。弱いくせに変なプライドをもっている子は、正直言うとダメです。」

――ご自身は、後輩の指導にも熱心なほうだと思いますか。

「自分はまだ教える立場にもなっていませんが、兄弟子として弟弟子に何かを教えてあげたいと思うかどうかは、その子次第です。やる気のないやつには声をかけようとも思わないし、厳しく指導することで、最近流行りの『パワハラ』などと言われてしまうのであれば、冷たいかもしれないけれど、自分は何も教えません。そこまでのやる気がないと見たら、わざわざ教えてあげる必要はないでしょう。逆に、やる気のある子には積極的に声をかけています。」

――確かに、うまくなりたい、強くなりたいという向上心のある子は、こちらから進んで手を差し伸べたくなるものですよね。

「応援する側と一緒です。覇気のない力士の応援は誰もしないけれど、目の前でガッツある相撲を取られたら、今まで知らなかったとしても、その子の名前を覚えますよね。稽古場でも同じで、結局やるのは自分なんです。自分のやる気がないから『やらされている』感覚になってしまうだけで、前向きな気持ちさえあれば、稽古の内容も変わってきます。」

――本当にそうですね。今後の相撲界の発展のために、ご自身が今できることとはなんでしょうか。

「土俵の充実、それだけです。現役力士は、一生懸命相撲を取って、いい相撲を見せること。それ以外にありません。」

力士の役割はただ「いい相撲を見せること」

――日本の伝統文化を色濃く受け継ぎ、「国技」と呼ばれる大相撲の世界は、スポーツ界のなかでも独特です。嘉風関は、相撲をどのように捉えていますか。

「相撲の役割としては、伝統文化を後世に伝えていくことが一番なので、やはり神事でしょう。もし単なるスポーツだったら、しきたりもちょんまげもなくなるんじゃないですか。5月場所の千秋楽には、アメリカのトランプ大統領が観戦に訪れました。こうした外交の大事な場面に登場するというのは、並大抵のことではありません。相撲はやっぱり、ただのスポーツではないと思います。」

――力士として、嘉風関ご自身が、伝統文化の象徴であるという意識は、日頃から感じられていますか。

「伝統文化とかしきたりとかスポーツとか、そんなことはとりあえず置いておいて、自分たちの役割は、ただいい相撲を見せること。この世界は『大相撲』であり、僕らは『相撲取り』です。お客さんはみんな、大銀杏ではなく力強い相撲を見に来ているのですから、そこが醍醐味でしょう。」

――最後に、今後の目標についてお聞かせください。

「自分の好きなことを仕事にできているのは、とてもありがたいことです。でも、力士は弱ければ番付が下がっていきます。当面の目標は、現役を長く続けることであり、さらにいえば長く幕の内でいること。そのために何が必要かを日々考えながら、今後も相撲を取っていきたいと思っています。」

※この対談は6月に行われたものです

【プロフィール】

嘉風雅継(よしかぜ・まさつぐ)

1982年3月19日生まれ、大分県出身。大分県立中津工業高校、日本体育大学体育学部武道学科卒業。本名は大西雅継。尾車部屋所属。大学3年次の全日本相撲選手権大会で優勝。2004年1月場所の入門後、05年7月場所に新十両、06年1月場所に新入幕。体の機動力と、前に出る力を生かした突き押し相撲を得意とする。最高位は関脇(2019年6月現在)。

【著者プロフィール】

飯塚さき(いいづか・さき)

1989年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、18年に独立。フリーランスの記者として『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(報知新聞社)、『Yoga&Fitness』(フィットネススポーツ)、『剣道日本』などで執筆中。

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