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インタビュー

若隆景(前編):2場所連続で技能賞を獲得 好調の秘訣に迫る

2021年6月23日 11:38配信

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日本の伝統文化を色濃く継承する、華やかな大相撲の世界。力士たちは皆、なぜこの道を志し、日々土俵に向かっているのだろうか。本連載コラムでは、さまざまな人気力士たちにインタビューし、その素顔を探っていく。

今回ご登場いただくのは、3月場所・5月場所と2場所連続で技能賞を獲得した若隆景関。体重127キロという決して大きくない体で、どんな相手にも真っ向勝負で立ち向かっていく。今年の場所の振り返りと、普段の稽古の様子などについて伺った。

(聞き手・文・撮影/飯塚さき)

下からの攻めで2場所連続技能賞受賞

――先の5月場所では9勝、その前の3月場所では10勝を挙げ、見事2場所連続で技能賞を獲得された若隆景関です。まずは、おめでとうございます。

若隆景関(以下、「」のみ)「ありがとうございます」

――今場所の好成績の理由は、どんなところにあったとお考えですか。

「下からの攻め、自分の攻めができたことが、一番よかったと思っています。おっつけやハズ押しもしっかりできていたので、よかったです」

――荒汐部屋では、年末から1月にかけて、ご自身を含む複数の力士の新型コロナウイルス感染が発覚し、今年の初場所は休場となってしまいました。その影響を引きずることなく、3月・5月は連日素晴らしい相撲を取り続けました。そのあたりはいかがでしたか。

「やっぱり、出るからには休場を引きずることのないようにと思い、実際引きずることなくできました。感染したときはいろいろと大変で、体重も一時期落ちてしまいましたが、場所前までには戻せて、稽古もしっかりできたのでよかったです」

――3月場所は、貴景勝と正代の2大関を、先の5月場所では、正代と朝乃山の2大関を撃破し、土俵を盛り上げました。勝因はどこにありましたか。何か作戦を立てて臨んだのでしょうか。

「大関戦だからといって、特別作戦を立てて臨むというわけでもありません。逆に、どんな相手でも、ある程度のイメージはしますが、もちろんすべてその通りにはならないので、あとは体に任せていく感じです」

――今場所の朝乃山関戦は、1分近い熱戦でした。途中、押し込まれてしまってもよく残し、最後は堂々の寄り倒しで勝利。長い相撲でしたが、振り返ってみていかがですか。

「長かったので苦しいのはありましたが、とにかく我慢できたのがよかったかなと。体が小さいので、下からかまして攻める相撲は常に意識しています」

あこがれは“お兄ちゃん”若乃花

――関取は、ご自身の取り口の強みはどんなところにあるとお考えですか。

「下から上に攻め上げる相撲を取れれば一番いいですね。立ち合いも一緒で、下から当たるように心がけています。逆にいま課題だなと思っていることは、はたかれて負けることが多いので、脚がそろわないようにすること。先場所も、何度かはたかれて負けているので、稽古場でも意識してやっています」

――普段、相撲の研究などはしていますか。

「よく、動画を見ています。研究のために対戦相手の動画を見たり、昔のお相撲さんの動画を見たりします」

――昔の相撲もご覧になるんですね。動画を見て、ご自身の相撲にどのように参考にされているんですか。

「昔の相撲に関しては、参考にするとかではなく、単に自分が好きで見ています。対戦相手の動画は、研究のためにと思っていますが、そうでないものは好きで見ている気持ちのほうが大きいんです」

――やはり、お相撲を見るのは昔から好きだったんですか。

「はい、小さい頃からよく見ていました」

――例えば、どんな動画を見ているんでしょうか。

「小さい頃からのあこがれは、元横綱の若乃花さん。一番カッコいいと思うのは、先代の九重親方である、千代の富士さんです。自分自身も、体が大きいほうではないので、そういう人たちが大きい力士を倒していく姿を見て、刺激を受けることがあります」

平常心を保つ「引きずらない努力」

――これまで、角界に入ってから印象的だった取組はありますか。

「大相撲の世界に入ってからだと、幕下筆頭で勝ち越しを決めた一番ですね。相手は、現在十両の炎鵬関でした」

――炎鵬関に勝って、新十両を決めたんですね。自分より小さい相手は、やりにくかったですか。

「やりづらさは感じませんでした。とにかく勝ってうれしくて、終わってから親方に最初に報告しました」

――関取にとって、やりにくい相手や苦手な人はいるのでしょうか。

「苦手な人はいるんですけど、意識をもたないようにしています。そのほうが、先入観なく向かっていけると思うからです」

――そういう心がけでいらっしゃるんですね。では、最近の稽古の様子や、1日のルーティンを教えてください。

「最近の稽古は、若元春(2番目の兄)を相手に、1日20番くらい取っています。朝は6時半くらいに起きて、7時半くらいから稽古が始まり、10時くらいに終わります。稽古が終わったら、風呂に入って頭(髷)を直してちゃんこを食べて、12時すぎくらいに自宅に帰ってくる。そんな流れです」

――午後は、治療に行ったりご自宅で休んだりなどされているかと思いますが、ウエイトトレーニングをすることはありますか。

「いえ、自分は特にジムに行ってはやらないですね。やるとしても、ダンベルとかを使って、稽古場で軽くやる程度です」

――関取は、普段の取組でもあまり緊張することなく落ち着いて取っているように見えるのですが、何かメンタルのケアはされているのでしょうか。

「メンタルケアは、特別なことはしていません。ただ、目の前の一番にしっかり集中するという意識をもつようにはしています。負けたからといって、それを引きずるのではなく、しっかり切り替えて、明日の一番に備えようと思ってやっています。平常心を保つために、具体的に何をどうやってというのは…、言葉で表すのはなかなか難しくて、すみません。そんなにはっきりとはわかりませんが、引きずらないための努力はしています」

(第28回・後編へ続く)

【プロフィール】

若隆景渥(わかたかかげ・あつし)

1994年12月6日生まれ。福島県福島市出身。祖父は小結・若葉山(時津風部屋)、父は幕下・若信夫(立田川部屋)、兄は幕下・若隆元と十両・若元春という相撲一家に生まれ、小学1年生から柔道を、ほどなくして相撲も習い始める。学法福島高校3年次に、全日本ジュニア体重別相撲選手権大会100kg未満級優勝、世界ジュニア相撲選手権大会団体優勝・軽量級2位。東洋大学では、キャプテンを務めた4年次に、全国学生相撲選手権大会団体優勝、個人で準優勝を果たし、三段目最下位格付出資格を獲得。2人の兄が所属する荒汐部屋に入門し、2017年3月場所で初土俵を踏む。2018年5月場所で新十両、19年11月場所で新入幕。2021年3月場所は、前頭2枚目で10勝、翌5月場所は筆頭で9勝を挙げ、2場所連続で技能賞を受賞。次の7月場所は新三役で迎える。身長182cm、体重127kg。得意は右四つ・寄り。

【著者プロフィール】

いいづか・さき

1989年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーランスのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(報知新聞社)、『IRONMAN』(フィットネススポーツ)、Number Web(文藝春秋)、Yahoo!ニュースなどで執筆中。

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