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インタビュー

若隆景(後編):目標だった三役として迎える7月場所への意気込みを語る

2021年6月30日 09:30配信

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日本の伝統文化を色濃く継承する、華やかな大相撲の世界。力士たちは皆、なぜこの道を志し、日々土俵に向かっているのだろうか。本連載コラムでは、さまざまな人気力士たちにインタビューし、その素顔を探っていく。

生粋の相撲一家に生まれ育った若隆景関。3兄弟の末っ子として、2人の兄と共に幼い頃から相撲に親しんできた。現在は4児の父でもあり、応援してくれる家族に囲まれながら、新三役として来場所を見据える。

(聞き手・文・撮影=飯塚さき)

小学1年生から3兄弟で相撲を始める

――若隆景関は、おじいさまが小結・若葉山(時津風部屋)、お父さまは幕下・若信夫(立田川部屋)、二人のお兄さまが、現在の幕下・若隆元さんと十両・若元春関という相撲一家に生まれました。小さい頃から相撲は身近だったのだろうと想像しますが、ご自身でも大相撲を見るのは好きでしたか。

若隆景関(以下、「」のみ)「はい、相撲を見るのは好きでした。そんなにはっきりとは覚えていませんが、兄弟3人一緒に相撲を習い始めて、自分は小学1年生のときでした。始めたばかりの頃のことはあまり覚えていないけど、楽しかったという思い出はありませんね(笑)。稽古は、とにかくきつかった。小学校中学年くらいからは、やっぱりきつかったのを覚えています」

――以前、お父さまにもお話を伺いましたが、小さい頃は2番目のお兄さん(若元春関)に勝てず、その悔しさが原動力だったのではとおっしゃっていました。

「その頃は、兄に勝てない悔しさよりも、同級生に勝てないのが悔しかったんですよね。体がかなり小さくて、兄にはもちろん、同じ歳の子相手にも、なかなか勝てませんでした。でも、辞めたいなと思ったことはありません。幼い頃なので、そこまで深くは考えていなかったかもしれないですが、やるからには一生懸命取り組みたいという気持ちでいたように思います」

――その後、中学、高校、大学と、年を重ねるごとに強くなっていきましたね。

「年齢が上がるにつれて、ちょっとずつ勝てるようになってきたので、それでまた頑張ろうという気持ちになって、続けてこられたかなと思います。負けても負けてもあきらめないで、コツコツやってきたのが実ってきたのかなと。成績もどんどん上がると、自信になりますよね」

東日本大震災乗り越え角界入り

――しかし、2011年の東日本大震災で、地元の福島市も甚大な被害がありました。当時は大変だったと思いますが、いかがでしたか。

「震災後、すぐに兄がいたこの荒汐部屋に避難させてもらい、1か月くらいお世話になったので、大変だったといえば大変でした。もともと、部屋には合宿で何度も来ているので、そう慣れない環境ではありませんでしたが。ただ、高校卒業時点では、プロに入ろうという気持ちがそんなに強くなかったので、大学に進学しました」

――二人のお兄さんが高校卒業と同時に入門したなかで、関取だけが大学まで行きました。いま振り返って、大学に行ってよかったなと思うのは、どんなことですか。

「小さかった体を、ひとまわりもふたまわりも大きくすることができましたし、たくさんの稽古相手がいる恵まれた環境で、4年間周りと競争しながら取り組めたのは、よかったと思います。4年生のとき、インカレで準優勝したことで、三段目付け出し資格を取得し、角界入りへの自信がつきましたね」

――そして、2人のお兄さんがすでに入門していた荒汐部屋に入りました。

「はい、兄たちがいてくれるのは心強かったです」

目標だった新三役で勝ち越しを目指す

――現在、食生活で気をつけていることはありますか。

「食事は、バランスよくたくさん食べること。そこまで前ほどたくさん食べているわけではないけれど、あと5キロくらい増やしたいなと思っています」

――好きな食べ物、嫌いな食べ物はありますか。

「嫌いなのは、トマトとか。好きなものは寿司です。肉も好きですが、最近特に魚をさばくことが趣味で、自分で勉強して、ネットで魚を注文してさばいています」

――すごいですね。ほかに、何か趣味はありますか。

「相撲を見ることも趣味ではあります。好きなので」

――コロナ禍で、家にいる時間が増えていると思いますが、いかがですか。

「そうですね、家族との時間は増えています。ただ、もしこの状況が落ち着いて、コロナ以前のような生活に戻れたら、家族みんなで温泉とかに行きたいですね」

――本来であれば、先場所三役に上がってもおかしくない成績でしたが、2年ぶりに名古屋で開催される来場所で、いよいよ新三役になります。お気持ちはいかがですか。

「残念ながら先場所上がれなかったので、今場所こそはという気持ちで臨んでいましたし、上がれなかったからといって落ち込まず、次でまた頑張ろうという気持ちになりました。上がれなかったことで、より奮起できたんですね。ずっと目標にしてきた三役です。そこを達成できたのはうれしいのですが、ここで満足せず、自分の相撲を取り切って、次も勝ち越しを目指して頑張りたいと思います」

――来場所は、同部屋の荒篤山関が新十両で臨みます。

「はい。ずっと一緒にやってきたので、うれしいですし、今後も一緒に頑張っていけたらなと思っています。普段は、明るくて陽気な人。これからもっともっと強くなってほしいです」

――関取の、力士としての長期的な夢や目標は何かありますか。

「はっきりとした目標はありませんが、いまはしっかり来場所のことを考えています。目の前のことひとつひとつに向き合って取り組んでいきたいです」

――ここまでお付き合いいただきありがとうございました。最後に、関取が思う、大相撲の魅力を教えてください。

「大相撲は国技なので、伝統を大事にしているところも魅力だと思います。土俵の上では、いろんな体格の力士がいるなかで、小さい人が大きい人を倒すのも、相撲の醍醐味です。ぜひ、いろんな面白いところを見つけて、多くの人に見ていただければなと思います」

【プロフィール】

若隆景渥(わかたかかげ・あつし)

1994年12月6日生まれ。福島県福島市出身。祖父は小結・若葉山(時津風部屋)、父は幕下・若信夫(立田川部屋)、兄は幕下・若隆元と十両・若元春という相撲一家に生まれ、小学1年生から柔道を、ほどなくして相撲も習い始める。学法福島高校3年次に、全日本ジュニア体重別相撲選手権大会100kg未満級優勝、世界ジュニア相撲選手権大会団体優勝・軽量級2位。東洋大学では、キャプテンを務めた4年次に、全国学生相撲選手権大会団体優勝、個人で準優勝を果たし、三段目最下位格付出資格を獲得。2人の兄が所属する荒汐部屋に入門し、2017年3月場所で初土俵を踏む。2018年5月場所で新十両、19年11月場所で新入幕。2021年3月場所は、前頭2枚目で10勝、翌5月場所は筆頭で9勝を挙げ、2場所連続で技能賞を受賞。次の7月場所は新三役で迎える。身長182cm、体重127kg。得意は右四つ・寄り。

【著者プロフィール】

いいづか・さき

1989年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーランスのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(報知新聞社)、『IRONMAN』(フィットネススポーツ)、Number Web(文藝春秋)、Yahoo! ニュースなどで執筆中。

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