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インタビュー

宇良(前編):大ケガからの復活、目標としていた“技能賞”への道のり

2021年12月17日 12:00配信

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日本の伝統文化を色濃く継承する、華やかな大相撲の世界。力士たちは皆、なぜこの道を志し、日々土俵に向かっているのだろうか。本連載コラムでは、さまざまな人気力士たちにインタビューし、その素顔を探っていく。

今回お話を伺ったのは、多様な反り技や足取りなど、華麗な技で土俵を沸かす木瀬部屋の宇良関。先の11月場所では、見事二桁勝利し、自身初となる技能賞を受賞した。先場所の相撲に加え、2度にわたるひざのケガを克服したことについても振り返っていただいた。

(聞き手・文・撮影/飯塚さき)

二桁勝利を挙げて念願の技能賞を獲得

――11月場所では、初の技能賞受賞おめでとうございます。率直な感想はいかがですか。

宇良関(以下、「」のみ)「たまたまですが、もちろん、ずっと目標にしていたのでうれしかったです。これまで評価されてこなかったことで、自分の相撲では技能賞は取れないんだなと思っていました。だからといって落ち込むことはないんですけど、自分の技を技能として認められないのを受け止めるしかないと、諦めていた部分はありました。だからこそ、今回はうれしかったですね」

――先場所は10日目で勝ち越し。結果として10勝を挙げました。取組を振り返ってみて、印象的な一番はありますか。

「どれも鮮明に覚えていますが、これが一番というのは特にないです。気持ち的には、今回勝ち越せるとも思っていなかったので、プレッシャーになるようなことは何もありませんでした。その分、のびのび取れたのはあるかもしれません。毎度ですが、勝ち越したらホッとしますね。7番勝ってからは、あとは残り1番だというのを思ったりします」

――では、逆に何か課題や反省点はありましたか。

「力が足りなかったと思う部分は、反省してもすぐ力がつくわけではないので、考えても仕方ないと思っています。ここから稽古をして、幕内でしっかり戦える体をつくっていかないといけないですね」

――宇良関は、多様な技や動きの良さなど、たくさんの持ち味がありますが、ご自身で思う自分の強みはどんなところにありますか。

「長所はあると思っていないんです。気持ち的にすごく不利な競技を選んでしまったな、失敗したなと思いますね」

――中学生までのレスリングの経験も生きているのではないでしょうか。

「いや、僕レスリングはすごく弱かったんです。僕の相撲を見て、これがレスリングかって思われると、逆にレスリングをやっている人たちに申し訳ないと思っちゃいます」

――なるほど。でも、他競技を経験することで、多様な体の使い方が身につくのではないでしょうか。そのあたりは主観的にいかがですか。

「それはまさにその通りだと思います。野球でもサッカーでもなんでも、スポーツをしていたら共通する部分もありますから、いろんな競技経験があるのはいいことですよね」

つけたいのは、すべての基盤となる「押す力」

――ここ数年間で、体が一回り大きくなりましたね。

「はい、単純な話で、相撲では大きいほうがやっぱり強いと思うからです。でも、むしろ先場所は10キロ落ちてしまいました。普段は落とさないように必死なんですが」

――ストイックなイメージがある宇良関です。稽古に加え、トレーニングもしていますよね。

「していますが、みんなに言われるようなストイックさはないと思います。ボチボチやっているって感じです。壊れないように丈夫な体を作って、大きくするようなトレーニングをしています。とはいえ、みんなやっているので、特別なことではないです」

――いま、ご自身で伸ばしたい力や課題はなんですか。

「一番は押す力をつけることです。もっと押しで戦えるようにしたい。それが、幕内に定着できるかのカギになると思うので。僕の相撲は“変則的”といわれますが、しっかり押した上で技を身につけていきたいんです。以前、白鵬関(現・間垣親方)が『型を持って型を破る』といったことをおっしゃっているのをどこかで見て、すごいなあ、僕もそうなりたいなあと思いました。そんなきれいな言葉を自分は思いつかなかったんですけど、やろうとしていることは共通していると思えました」

――本当に、偉大な横綱の言葉ですね。宇良関は普段、相撲の研究はしますか。

「自分の相撲はあまり見ないです。自分のここを直したいとか、そういう研究の仕方はしないですね。ただ、ほかの人の相撲はよく見ます」

大ケガを乗り越えたのは「応援のおかげ」

――宇良関は、度重なる前十字靭帯断裂という大ケガを経験し、一時は序二段にまで番付を落としました。それでも、ケガを乗り越えられた理由はなんだったのでしょうか。

「応援していただいている方が一番の支えでした。もう一回期待に応えたいなと、その気持ちだけですね」

――辞めたいと思ったことはありませんでしたか。

「2回目のときは、さすがにここが節目かなと思いました。続けようか悩んだのはそこです。でも、そこでもう一回やると決めてからは、辞めたいとは思いませんでした。それもやはり、応援してくれる方がいたからです」

――周囲の支えが大きかったんですね。ケガを経て、食へのこだわりなどは出てきましたか。

「タンパク質を多くとりたいなといつも思っています。実は、嫌いなものがいっぱいありまして…。主には、トマトと、フルーツなどの酸っぱいものが苦手です。不足しがちなビタミンCなどは、サプリメントでとっています」

――コロナ禍で「おうち時間」が増えましたが、普段は何をして過ごしていますか。

「もともと積極的に外に出るタイプじゃないので、自粛は全然問題ないです。余暇という余暇はないけど、ボーっとしていることが一番多いですかね。趣味は、唯一あるとしたらウクレレくらい。誰かに教わったわけじゃないので、弾けているのかもわからないんですけど、一人で弾き語りをしています」

(第34回・後編へ続く)

【プロフィール】

宇良和輝(うら・かずき)

1992年6月22日生まれ。大阪府寝屋川市出身。本名は四股名と同じ。4歳から相撲を始める。小学3年生の終わり頃からレスリングも始め、中学まで2競技に取り組む。相撲部のある京都府立鳥羽高校に進学したことで、相撲1本に絞る。勉学を志して関西学院大学に進学後、1年次に全国学生相撲個人体重別選手権65kg未満級で優勝、4年次には無差別級で3位。小学校と幼稚園の教員免許を取得し卒業後、木瀬部屋に入門。2015年3月場所で初土俵を踏む。とんとん拍子に番付を上げ、翌16年5月場所で新十両昇進、さらに1年後の3月場所で新入幕を果たした。小柄ながら多彩な技で土俵を沸かせたが、その後2度にわたるひざのケガで長期休場、一時は序二段にまで番付を落とした。19年11月場所から復帰。昨年11月場所で関取に復帰し、先の11月場所では、幕内で二桁勝利し、自身初となる技能賞を獲得した。最高位は東前頭4枚目。身長176cm、体重147kg。得意は押し・足取り。

【著者プロフィール】

いいづか・さき

1989年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーランスのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(報知新聞社)、『IRONMAN』(フィットネススポーツ)、Number Web(文藝春秋)、Yahoo!ニュースなどで執筆中。

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