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コラム

元・東桜山のみんなの大相撲「引退後、もう一つの土俵」

2019年2月26日 15:10配信

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毎年3月の春場所は多くの新弟子たちが入門してくる“就職場所”と呼ばれています。中学校や高校を卒業した若者たちが夢をいだいて入門してきます。

その反対に、毎年多くの力士が土俵を去っていきます。横綱や三役、そして幕内力士たちの多くは引退後、親方として相撲協会に残ることができ、若い力士の指導にあたることができます。給料も相撲協会から払われて定年まで雇用されます。ただその一方で引退していく力士の大半は、相撲とは関係の無い一般社会での仕事に就きます。

よく「引退後、お仕事はなにをされているんですか?」と聞かれることがあります。毎年数十名の力士たちが引退していきますので一概には言えませんが、多くの力士が飲食関係の仕事に就く場合があります。相撲部屋では毎日交代でちゃんこ番(食事当番)が全員分のちゃんこ(食事)を作ります。20名の力士が居る部屋では20名分の料理を作ればよいわけではなく、1人が5人前ほど食べますから毎食100人分くらいの料理を作らなくてはいけません。当然、仕込の材料を切るのも大変ですし調理することも大変。自然と飲食店並みの料理をつくる修行が出来るのです。また力士は、団体生活をしていることもありますし、ファンや後援会の方とも接する機会があるので、社交的な人が多く、それも飲食関係の仕事につく理由のひとつです。

私の場合、いまから12年前の2007年9月に引退しましたが引退してケーブルテレビの番組を制作する会社に就職しました。右も左もわからずに、会社では電話を出るところからスタートしました。電話の応対をするだけでも一苦労。「御社」とか「弊社」とかチンプンカンプン。覚えることも多く朝から晩まで無我夢中だったことを思い出します。それからスーパーマーケットに転職し、起業もして、現在に至ります。現在はWEBページを制作する会社やりながらその傍ら、引退後の力士たちの受け皿になればと思い、浅草で友人とちゃんこ鍋屋さんをやっています。

引退後もちろん相撲部屋を出て一人暮らしをするのですが、それまでは20名以上の力士たちとの共同関活で寝るのも食事もいつも一緒。むしろ「個室に住みたい」とか「あぁ一人暮らし良いなぁ」なんて憧れていました。それがいざ一人暮らしを始めてみると、それはそれは寂しいものです。

夜寝るときに部屋が全くの無音状態。逆に静かすぎて寝付けないのです。あげくの果てには小さな物音ひとつにも「あれ?もしかして泥棒?」と大きな身体してビクビクしていました。

相撲部屋にいたときは毎晩力士たちの大音量いびきオーケストラ。あれが心地よいBGMになっていたことに引退後気が付くのです。さらには一人暮らしをして毎月、電気代や水道代がいくらかかるのか?はたまた食費はいくらかかるのか?そんなことすらわからない状態で生活していきます。

私は大卒で入門したので、まだ自分なりに少しは世間を知っているつもりではいましたが、実際に生活をしてみて、その大変さを肌で感じ、自分が全くの世間知らずだったと情けなく感じたものです。

いまはおかげさまで家庭も持ち子供も生まれ、何とか生活できる状況ではありますが、力士時代の“2食昼寝付き”の生活を思い出すと、「なんて贅沢な」なんて思うときがあります。

現役中は厳しい世界でわき目も振らず、必死に相撲を追いかけて土俵にあがっていますが、引退後の“もう一つの土俵”も決して甘いものではないのです。

宣伝になりますが現在、私は「浅草ちゃんこ場」というちゃんこ屋さんをやっています。浅草にお越しの際はぜひお立ち寄りください。

浅草ちゃんこ場

東京都台東区西浅草2-27-10

03-3845-0550

営業時間12時~0時(不定休)

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