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コラム

元・東桜山のみんなの大相撲 這い上がる力

2019年8月28日 18:10配信

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先月7月、仕事で日本に居たのは帰国して再び出発した乗り継ぎの4日間だけでした。海外に居て、外国の人たちと会話をしたり、海外から日本を俯瞰(ふかん)して見ると、いままでと違った視点でいろいろと気が付くことがあります。人生観もそうですが世界から見た相撲のことなど私なりに感じたことがあるので今日はそのお話をしたいと思います。

前回のコラムでインド映画に出演する話をしましたが、映画撮影は6月初めから約3週間日本でロケをして、さらにインドのチェンナイで15日間撮影をしました。インド人スタッフたちと接することで、強く感じたことがあります。日本に比べてインドは、インフラも整備されていなかったり街がとても汚いです。水道の水を飲むことも出来ませんし、交通ルールなどもめちゃくちゃです。

インドに居ると「日本ってすごいなぁ。街が綺麗だし本当に住みやすい」と再確認します。日本は本当に優れた国だなって感じる反面、日本ってこのままでは世界に置いて行かれるんじゃないかと強く感じました。というのも彼らインドの人は、その劣悪な環境から抜け出すために常に国の外、世界を見ています。そして彼らはヒンディー語やタミル語などインドの言葉の他に英語を話すことができます。何人かのインド人と話をすると、大学はアメリカの大学に行ったとか、家族で世界に移住したり。世界を見るとグーグルのCEOはインド人だったり、世界の名だたる企業のトップにはインド人の役員が結構います。自分のアイデンティティとしてインドを誇りに思いつつ、自分の生活はより良いものへしていこうという力があります。日本人は私もそうですが、まず言葉の壁があります。まともな英語を話せる人はなかなかいません。フランスの人に「なんで日本人は、私が日本語で話しかけてるのに、ノーノ―、ソリー、ジャパニーズオンリーとか言って逃げちゃうんでしょうか?」と言われました。確かに外国人の方に話しかけられたらちょっとビックリしてそう答えてしまうこともあります。日本は地形的に島国だから「島国根性」みたいなことを言われますが、地形的な問題以上に言葉の壁が大きく日本と世界とのつながりを困難なものにしています。日本人は、いまの環境に慣れてしまい、そして満足しているため今後の成長としてはこれ以上の成長がない国のように感じました。

このことを考えるとこれは相撲部屋にも当てはまる気がします。昔は、兄弟子を「むりへんにゲンコツ」なんて表現するくらい、何かあれば兄弟子に頭を殴られたり、とても厳しい指導や生活だったと思います。いじめみたいなものもあったでしょう。ちゃんこだって下の力士には大したものが残ってなくて、ちゃんこの汁をご飯にかけてお腹を満たしていたなんて聞いたことがあります。ただそんな劣悪な環境に居れば「くそぉ、絶対強くなってやる」という、気持ちが強くなり、稽古にも精進して出世して良い生活を出来るように頑張ると思います。現在の相撲部屋はどうでしょうか?親方たちは弟子集めにも苦労して、せっかく入門した弟子が辞めてしまっては困りますし、最近の若い子たちは厳しくするとすぐやめてしまうので、優しい良い環境を与えるようになります。そうなると当然、相撲部屋にいることが居心地良くなり、「絶対に強くなってこの状況から抜け出してやる」なんて力士は少なく、相撲部屋全体としても成長率が下がる気がします。どちらが良いのかこれは本当にと難しい問題だと思います。“這い上がる力”この原動力には少なからず厳しい環境が必要だと私は思います。

このことを感じていろいろと考えるようになってから私自身の生活も今一度考え直そうと思いました。人生の目標をもっと上に置いて、いまの生活に胡坐をかいているようではダメなんだぁと思います。もっともっと成長できるチャンスはあると思います。玉ノ井部屋の昔の部屋には稽古場の上り座敷に「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」という言葉が飾ってありました。

いまごろになって、ようやくその言葉の意味が理解できます。20年前の私に伝えることが出来るならいま感じているこのことを教えてやりたいなと思うくらいです。

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