コラム
元・東桜山のみんなの大相撲 おもろないわぁ
2021年3月10日 17:55配信
先日、大阪に住む私の古くからの知人から電話がありました。第一声が今日のタイトルにある「おもろないわぁ」でした。なんのことかといえば、大阪で行われる春場所が2年連続見れなくなったことについてです。
例年、3月の春場所は大阪で開催され、別名就職場所などと呼ばれ新たに多くの力士たちが入門してくるまさに春のスタートの本場所です。多くの力士たちがこの大阪からデビューして、着慣れない着物に履きなれない下駄を履き、電車に乗る姿などがよく見かけられました。
昨年の無観客開催。その後も新型コロナウィルス感染症の感染拡大に伴い、力士たちの大阪への移動や、力士たちの宿舎への影響の配慮から、今年は東京開催。誰が悪いわけでは無いのですが、大阪のファンもそうですが、力士たち本人もとても残念に感じていることと思います。
私は、生まれも育ちも東京だったので、大学に入るまで大阪の人に知り合う機会も無く、大阪という場所は近いようで遠いイメージを感じていました。初めて大阪に行ったのは、たしか大学の合宿。その時、買い出しのために行ったスーパーで近所のおばさまが会話しているのが聞こえてきて、本物の関西弁に感動した記憶がいまでも鮮明に残っています。そんな私も、大相撲に入門してから、大阪は第二の故郷と感じるくらい多くの人たちにお世話になり、いまでも大阪に行くと、多くの知人からお誘いを受けて、食事をしたり家に遊びにいかせてもらったりしています。実は私の妻も大阪の人でして、コロナ禍前は、仕事も含め年に数回大阪に行っていました。
大阪は昔から好角家が多く、大阪にあった大阪国技館の収容人員はなんと現在の国技館の2倍以上、25000人収容のものでした。それくらい人気があったのが分かります。力士のことを“お相撲さん”と呼ぶのも大阪が発祥と言われてます。七福神の恵比寿様を“えべっさん”と呼んだり、お菓子の飴玉を“あめちゃん”と呼んだり。大阪の人はいろんなものに敬称をつけます。
また後援者のことを“タニマチ”と呼ぶのも大阪が由来。大阪の谷町に相撲好きなお医者さんがいて治療に行くと食事をさせてくれたり小遣いをくれたり。それが現在では、後援者のことを“タニマチ”と呼ぶようになった由来です。
私に電話をくれた大阪の知人も、春場所のために貯金をしていて、力士たちが来ると、大阪の美味しいものを力士たちにご馳走してくれたり、いっしょにワイワイお酒を飲むのが好きな人です。力士たちを本当の弟以上に可愛がってくれて、いまでも私の後輩たちはお世話になっています。春場所が東京開催になると発表があってすぐに電話があって、「おもろないわぁ」と言った後、電話を切る最後に、「もうみんなこんのやったら(来ないなら)、たっしー(田代)来てや」と(笑)。
大相撲は、ある種季節の風物詩にもなっています。 大阪では春が来ると力士も来て、名古屋では夏、福岡では寒くなると力士が来ます。 私たちが街を歩くと「あぁーもう大相撲の季節かぁ」なんて街の声を良く聞いたことがあります。
ようやく今月からワクチン接種がはじまり、世界中でも徐々に感染者が減っています。まだまだこの状況は続くかもしれないですが、コロナ前の日常がいかに幸せなことだったかを最近よく思います。また再び大観衆が大きな声で声援を送れる大相撲開催ができることを願っています。
さぁ3月場所はまたどんなドラマが生まれるのでしょうか。
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