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コラム

相撲からプライベートまでまとめて角界雑記 銀治郎の角界雑記 その2 for スゴ得

2021年4月21日 16:55配信

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土俵際を見る行司の目

皆さんは大相撲を観る時、勝った方を観る人がほとんどだと思います。しかし、私達行司はどちらが先に負けるかしか観ていません。

立合いを成立させて、軍配を引いた時から既に意識はどちらが負けるのか!?

「ノコッタノコッタ」の掛け声とは裏腹に、「どちらが負けるのか!どちらが負けるのか?!」と、心の中で叫んでいます。そして、負けを見てから勝った力士に軍配を上げる。これが鉄則であり、基本中の基本です。

勝ち力士を観ると言う事は、お客様目線で相撲内容を観ているだけで、勝負を全く観ていないと言うことになります。即ち、土俵上で繰り広げられた内容を行司が語る事はできません。相撲は観ずに、「勝負」を観ているからです。

勝負俵の外には「蛇の目」と呼ばれる砂が敷き詰められています。これは、つま先やかかと等が踏み越した時に痕がくっきり付くように、所謂「証拠物件」として非常に重要な役割を果たします。

しかしこの蛇の目の砂が、時にはとんでもない「イタズラ」をするのです。

取組の最中にこの蛇の目砂が、時には微妙にハネる事があります。俵や土俵に強い衝撃を受けたりした時です。

土俵上からは非常にわかりにくいのですが、出番前に溜に控えているときに目にする事があります。

蛇の目砂に水を撒き、呼出しさんがホウキで綺麗に慣らしても、時間が経つにつれ、上部のみが乾いていて、サラサラな状態の時。日が経つにつれて僅かに埋められている俵も、否応なしに緩んで来ますし、特に館内が乾燥していたり等、様々な条件が折り重なった時です。

俵に足が掛かった瞬間、例えかかとが浮いていたにしても、砂が衝撃で持ち上がり、付いたか否か軍配を差すのに迷いが生じることもあります。その場合、ある程度の勝負の流れを優先してしまいます。

しかし、眼の前で勝負を観ている土俵下の審判委員の目は確かです。俵の上にかかとがあっても、砂を連れて来ることは充分ある事です。どちらを優先するかは行司ではなく審判委員です。また、俵の上に乗った足裏の真ん中「土踏まず」の部分が、蛇の目砂と俵の境目の部分の僅かな微量のところに触れる事も実際にあります。

どんな状況でも確実に、正確にその一瞬を見逃さず、負けを見て勝ち力士に軍配をあげる。

技術の進歩より、更にその上を行く確かな眼を養う事が、行司としての役割であり、この仕事の厳しさである以上に「おもしろさ」が溢れているやり甲斐のある「楽しさ」だと思います。

ではまた来週。

木村銀治郎

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