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インタビュー

豊昇龍(前編):史上初の同部屋3人による十両優勝決定戦「これまでで一番楽しかった」

2021年8月12日 13:44配信

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日本の伝統文化を色濃く継承する、華やかな大相撲の世界。力士たちは皆、なぜこの道を志し、日々土俵に向かっているのだろうか。本連載コラムでは、さまざまな人気力士たちにインタビューし、その素顔を探っていく。

今回話を伺ったのは、先の7月場所で10勝し、自身初となる技能賞を獲得した、立浪部屋の豊昇龍関。強靭な足腰としなやかな体から織りなす鮮やかな技の数々で、見る者を魅了する力士だ。先場所の振り返りと、叔父である元横綱・朝青龍との交流についても聞いた。

(聞き手・文・撮影/飯塚さき)

初の技能賞受賞は「条件なし」!

――2年ぶりとなった名古屋場所もお疲れさまでした。場所前の調整はうまくいきましたか。

豊昇龍関(以下、「」のみ)「はい、関取衆とも若い衆とも、強く当たるいい稽古ができていたので、調子はなかなかいい感じでした。何より勝ち越したいという気持ちがありましたし、いい稽古ができていて自信になりました」

――二桁勝利に技能賞受賞と大活躍でした。初日から振り返ってみていかがですか。

「初日に勝って始まったのがよかったと思います。11日目、大関・正代関に勝って勝ち越したので、すごくうれしかったです。当たったことのない相手ではなかったので、頭を下げないようにしっかり攻めよう、自分から攻めていきたいと思っていました」

――正代戦もそうでしたが、足の使い方のうまさも光っていました。

「足技も勉強中です。足癖が悪いといわれているんですけどね(笑)」

――今場所で印象的だった取組は。

「逸ノ城戦が一番きつかったですね。体重200kg以上の人と、取り直しで2回相撲取るなんて初めてだったので。それでも勝ちたかったので、勝ててよかったと思います」

――取り直しとなった逸ノ城戦も、9日目の若隆景戦も、下手投げでした。

「若隆景関には勝ったことがなかったので、いつまで負けるのかなって思っていて…。とても相撲のうまい方だし、ずっと勝ちたかったので、うれしかったです」

――華麗な下手投げには、何かコツはあるんでしょうか。

「今場所3回決めましたね。腕だけではなく、体全体を使って打つのがポイントです。変な打ち方をしてしまうと自分がケガしてしまうので、大きな相手には特に気をつけています。打つなら、腰を入れて思い切り打つしかないですね」

――技能賞受賞は、「千秋楽勝てば」の条件もつかない、文句なしの受賞でした。

「うれしかったです。14日目に負けた瞬間に、残念ながら三賞はもうないのかなって思っていたんですよ。千秋楽の朝、場所に着いて風呂に入って戻ってきたら、付け人に『関取、今日は最後まで残ってください』と言われて『え、なんで?』と聞いたら『技能賞確定ですよ』と。『今日勝ったら?』って聞いたら『いえ、勝っても負けても確定です』と言われて、それがものすごくうれしかったですね」

――西の5枚目で二桁勝利。来場所はどこまで上がるでしょうか。

「どうなりますかね。こればっかりはわからないので、番付発表を楽しみに待っています」

忘れられない同部屋3人による十両優勝決定戦

――関取は、足腰のよさや技の思い切りのよさ、たくさんの魅力がありますが、どんなところがご自身の強みだと感じていますか。

「自分で強みと思うところは…、気持ちで負けないと思っていることですかね」

――取組では、どんなところに注力して臨んでいますか。

「戦術的にはあまり決めていません。何も考えずに集中する。それで体が勝手に動く。集中すると体の反応がよくなりますから。相手のことは、研究しないことはないし、この人はこういう相撲を取るっていうのはわかっているので、相手の嫌がることをしないといけないなとは思うんですが、やっぱりそこも、集中して臨めば自分の相撲が取れるし、自分の相撲が取れればどんな人にも勝てるかなと思えるんです。いまでもYouTubeで動画なんかは見ますが、相手が強ければ、逆に自分が楽しめますしね。強い人と戦いたいって、入ったときから思っていたし、そのおかげで強くなってこられているとも思っていますので」

――角界に入ってから印象的だった場所や取組はありますか。

「1年前、同部屋の関取の明生関・天空海関と3人で十両優勝決定戦をしたことです。あれは本当に心に残っていますね。毎日毎日一緒に稽古していて、お互いのことはよくわかっています。本場所で同じ部屋の人と戦うことはないのに、しかも3人で戦うなんて、もっとないこと。相撲史でも初めてだったらしいので、すごいなと思って。しかも、場所前に3人で、これはもう本当に冗談で『3人で優勝決定戦になったらどうする?』なんて話していたんですよ。本当にそれが起きるとは思わなかったですね」

――実際やってみていかがでしたか。

「うれしかったですよ。緊張もなく、これまでで一番楽しかったです。終わった後、勝って十両優勝した明生関にハグして。負けたから悔しい気持ちはありましたが、お互い稽古して頑張りましたし、明生関にとっては初めての各段優勝でしたからね。自分が以前、明生関の付け人だったとき、序二段で優勝したんですが、そのとき明生関にハグしてもらったんですよ。それを思い出して、自分もハグを返しました」

あこがれは叔父と日馬富士 白鵬への挑戦も

――あこがれの力士はいますか。

「2人います。一人は、叔父さんである朝青龍関。もう一人は日馬富士関です。自分がお相撲さんになったとき、日馬富士関から『自分を信じててっぺん目指して頑張れ』と、ビデオメッセージを送ってもらったんです。自分のことを子どものときから知ってくれている人なので、すごくうれしかった」

――それは励みになりますね。いまも、叔父さんからは相撲のアドバイスなどをもらうと聞きましたが。

「はい、くれます。なにより『稽古が一番大事だぞ』と。稽古をどれくらい頑張ったかを見せるのが本場所だから、稽古が一番大事だと言われているんです。今回の場所後も、『二桁と初めての三賞おめでとう』と、電話をもらいました。最初はうちの親方と電話していて、親方に電話を変わってもらったら、話し相手が叔父さんだったので、びっくりしました(笑)」

――今後、対戦してみたい力士はいますか。

「横綱・白鵬関です。今回も、本当は当たりたかったですね。高校のときに1回、お相撲さんになってからも2回くらい稽古をつけてもらっていて、『早く上がってこないと、俺ももう引退しちゃうよ』なんて言われていたんです。あれだけきつい稽古をつけてもらったので、その感謝を勝って返せるようになりたいと思っています。いま、やっと戦えるところまできたので、来場所横綱が出られるのであれば、絶対当たるので頑張りたいです。よく、“世代交代”なんていわれますが、横綱は今回全勝優勝しているんですからね。たとえひざが悪くても、横綱は横綱なんだなと思いました」

(第30回・後編へ続く)

【プロフィール】

豊昇龍智勝(ほうしょうりゅう・ともかつ)

1999年5月22日生まれ。モンゴル・ウランバートル市出身。叔父は元横綱の朝青龍明徳。5歳から柔道を、11歳からレスリングを習い、レスリングで東京オリンピックを目指すために、高校1年生で日本に留学。そのとき、生で見た大相撲に影響を受け、レスリングを辞めて相撲部に入部。柏日体高校3年次に、インターハイ2位、十和田大会3位。高校卒業とともに立浪部屋に入門し、2018年1月場所で初土俵を踏む。同年5月場所では序二段優勝。その後も順調に番付を上げ、19年11月場所で新十両、20年9月場所で新入幕。先の21年7月場所は、前頭5枚目で10勝を挙げ、自身初となる技能賞を受賞した。身長186cm、体重131kg。得意は右四つ・寄り・投げ。

【著者プロフィール】

いいづか・さき

1989年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーランスのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(報知新聞社)、『IRONMAN』(フィットネススポーツ)、Number Web(文藝春秋)、Yahoo!ニュースなどで執筆中。

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