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インタビュー

妙義龍(前編):もうすぐ35歳を迎えるベテランの強さの秘訣

2021年10月19日 10:05配信

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日本の伝統文化を色濃く継承する、華やかな大相撲の世界。力士たちは皆、なぜこの道を志し、日々土俵に向かっているのだろうか。本連載コラムでは、さまざまな人気力士たちにインタビューし、その素顔を探っていく。

今回ご登場いただくのは、先の9月場所で優勝争いを演じた、境川部屋の妙義龍関。もうすぐ35歳を迎えるベテランながら、年齢を感じさせない強さを見せ続けている。先場所の振り返りと、その取り口の魅力にも迫る。

(聞き手・文・撮影/飯塚さき)

序盤から好スタートを切った9月場所

――9月場所では、準優勝と技能賞獲得、おめでとうございます!場所前は何か普段と違う部分はありましたか。

妙義龍関(以下、「」のみ)「いつもと変わらないんですよね。ひとつ違ったことといえば、合同稽古に参加したこと。いままで3~4回開催されているのは知っていたんですが、いろんな相手がいるし行ってみようと思って、今回初めて参加しました。御嶽海や逸ノ城、霧馬山など、上位の人と稽古して。稽古は本番とは違うから何とも言えませんが、新鮮な場でしたし、いい刺激にはなりました」

――初日から4連勝、10日目には勝ち越しを決めました。序盤から振り返っていかがですか。

「最初がよかったので、そのまま15日間もっていった感じです。勝ち越しも早かったですが、紙一重なんですよ。7月場所の10日目なんて、2勝8敗でしたから。負けたら“調子悪いのかな”とか、余計なことを考えてしまって、相撲の感覚を忘れちゃうんですが、それが一番ダメなことです。感覚さえ覚えておけば、結果はついてきます。今場所はうまく体が動いたし、気持ちが上向いていてよかったと思います」

――勝ち越せてホッとしたのでは。

「半年ぶりの勝ち越しでしたから。初場所から、8勝、7勝、6勝、5勝ときていたので、今場所は4勝なんかなって…。人間って弱気になりますし、特に番付の世界って保険がないから、やっぱり不安でした」

――関取でも、不安になることがあるんですね。

「めちゃめちゃ不安になるよ!ただ、だからといって、焦って何かをすることはないです。焦って普段と違うことをするとダメ。やることはいつもと変わらないし、これで高校から20年以上続けてきたっていう自負はありますね」

2大関撃破も「元気に相撲を取れているだけでありがたい」

――勝ち越しを決めた後、13日目には貴景勝関を、14日目には正代関を破りました。

「貴景勝が大関に上がってから、勝ったことがなかったんです。思い切り頭から突っ込んでいったらはたかれるし、見ていったら押し出されるし、右を差しにいったらはたかれるし、うまいことやられているんですよね。いままで考えすぎていたので、一発目の当たりだけ止めて、そこからという流れでした」

――特に正代戦は、頭で強く当たりながら左前みつを取って、その後すぐに右も取って一気に寄っていきました。お手本のような素晴らしい相撲でしたね。

「ありがとうございます。でも、度胸ですよ。そういうふうに行こうと考えていたわけではありません。イメージはするけど、相手がいることなので、思い描いた通りにはいきませんからね。左を取りに行く相撲もあまりしないけど、稽古場でやったことを試しただけです。それがはまりました」

――優勝戦線に残っていることは、いつくらいから意識しましたか。

「千秋楽にちょっとそんなこと考えたけど、その前は本当に何も考えていなかったんです。二桁勝っていたので、気負ったり緊張したりは、全然ありませんでした。勝とうとしなくても自然に体が動けていたので、こんな状態で今日も勝っちゃうのかなってふと考えて。そこでスカっと負けるのが相撲ですよね(苦笑)。でも、僕今月で35歳ですよ。同世代も引退しているなか、こうして元気に相撲を取れているだけでもありがたいことですわ」

――照ノ富士関と直接対決をしたいとは思いませんでしたか。

「それは審判部の仕事なので、特に思いませんでした。でも、大関戦を2回組んでもらったことはすごくうれしかったですね。十枚目と大関なんて普通当たらないし、それによって大関同士の対戦がなくなったわけですから、せっかくだから勝たないとという気持ちが出てきました。負けたら意味なかったし、結果的にはよかったです」

――6回目の技能賞を獲得。場所全体を振り返っていかがですか。

「ケガなく終わったことと、自分の相撲を技能賞として評価してもらったことはうれしいですね。技能賞獲得は、千秋楽の取組前に知っていました。情報はなかったけど、世話人が付け人に、箱を取りに来いって言うから(笑)」

強さの秘訣は「筋力トレーニング」

――関取の強みは、立ち合いのスピード感と低さにあると思いますが、ご自身ではどうお感じですか。

「まさにそうですね。小さく当たって大きくなっていくイメージ。貴景勝も、小さく当たって腕を伸ばしてきますよね。僕は身長が187cmあるので、小さく当たるのは難しいんですが、意識して磨いているというより、持って生まれたものだと思います。柔軟性もそう。昔から、何もしていないのに腕相撲強い子っているやないですか。それと一緒です。その代わり、右のひざは2回メス入れたし、足首も内視鏡をしてと、ケガが多いので、その保険・強化という意味で、ウエイトトレーニングは16歳からずっと継続してやっています」

――これまでどんなトレーニングをしてこられたんですか。

「埼玉栄でベースができて、そこから大学、プロと、いろんな種類のトレーニングをやるようになりました。ボディビルダーがするような、パーツを大きくする“筋肉トレーニング”は、はっきりいって僕らには必要ありません。重いものを担いだり、瞬発力を使って物を上げたりする“筋力トレーニング”をしています。相撲で必要なパワーをつけるためのトレーニングです。週に2回か3回、少なくとも2回はしたいところ。普段はジムに行きますが、コロナで外出できなかった期間は、部屋にあるフリーウエイトのラックを使って取り組んでいました」

――妙義龍関にとって、トレーニングはすごく重要な位置づけなんだろうなと想像します。

「そうですね。10代で始めて、いいトレーナーと巡り会って、それで相撲人生が変わったみたいなもんです。もちろん稽古が一番大事だけど、パワーをつけて外国人にも対抗していくために、自分にとって筋トレは大事なことだなと思っています」

(第32回・後編へ続く)

【プロフィール】

妙義龍泰成(みょうぎりゅう・やすなり)

1986年10月22日生まれ。兵庫県高砂市出身。本名は宮本泰成。幼い頃から、水泳や体操、柔道などさまざまな競技に親しんでおり、小学2年生から姫路市の広畑少年相撲教室で相撲を始める。中学では陸上部に所属する傍ら相撲を続け、3年次で都道府県大会と全中に出場。強豪校である埼玉栄高校に入学する。日本体育大学に進学後、4年次の大分国体成年個人の部で優勝し、幕下15枚目格付出の資格を獲得。卒業後に境川部屋に入門し、2009年5月場所で初土俵を踏む。勝ち越しを重ね、翌10年1月場所で新十両昇進、2場所連続の十両優勝を果たし、11月場所で新入幕を果たした。スピード感あふれる立ち合いで相手を圧倒する相撲が魅力で、先の9月場所では、新横綱の照ノ富士と共に優勝争いまで残り、6回目となる技能賞を獲得した。最高位は関脇。身長186cm、体重155kg。得意は押し・右四つ・寄り。

【著者プロフィール】

いいづか・さき

1989年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーランスのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(報知新聞社)、『IRONMAN』(フィットネススポーツ)、Number Web(文藝春秋)、Yahoo!ニュースなどで執筆中。

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