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インタビュー

隆の勝(後編):一度離れた相撲、合併、移転とさまざまな節目があった隆の勝の土俵人生とは

2022年6月29日 13:10配信

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日本の伝統文化を色濃く継承する、華やかな大相撲の世界。力士たちは皆、なぜこの道を志し、日々土俵に向かっているのだろうか。本連載コラムでは、さまざまな人気力士たちにインタビューし、その素顔を探っていく。

中学卒業後、当時の千賀ノ浦部屋に入門した隆の勝関。その後、師匠の交代や旧・貴乃花部屋との合併、さらに昨年は部屋の名称変更に移転と、さまざまな節目があった。相撲を始めたきっかけから、これまでの土俵人生を振り返っていただいた。

聞き手・文・撮影/飯塚さき

大横綱・白鵬に善戦した一番

――これまでで、印象的な場所や取組はありますか。

隆の勝関(以下、「」のみ)「一番印象深いのは、昨年名古屋場所の横綱・白鵬戦ですかね。負けたんですけど、かなり印象に残っています。あと一歩でしたが、一方的に負ける相撲じゃなかったので、忘れられないというか、いまでも思い出したりします。あんなに偉大な横綱にあそこまで攻められたというのが自信になったんです。新十両を決めたときは一番うれしかったけど、いま聞かれてパッと思い出したのはあの取組でした」

――幼少期にあこがれだった力士はいますか。

「栃東関、いまの玉ノ井親方です。小さい頃から相撲をやっていながら、あんまり大相撲をテレビで見るほど好きじゃなかったんですけど(笑)、父の横でちょっとテレビを見たときに、カッコいいな、いい相撲だなという印象がありました。自分とタイプは違いますけど、すごくいいなと思いました。あとは妙義龍関とか、ああいう相撲は見ていてカッコいいなと思います」

――逆に、関取のようなタイプの力士ってどなたでしょう。誰かに似ているなどと言われることはありますか。

「あまり言われないですね…いないかもしれません。もし似ている人がいたら、その人に寄っていっちゃう気がするので、自分は自分、その人はその人。骨格や筋力も人によって全然違うでしょうから、同じ相撲を取ろうと思っても難しいし、真似もできないので、自分らしい、自分だけの形でいいのかなと思っています」

離れてみてあらためて感じた相撲の面白さ

――千葉県・柏相撲少年団出身の関取。相撲を始めたきっかけはなんでしたか。

「市のわんぱく相撲大会に出たことです。小学1年生のときから出ていて、たしか決勝で女の子に負けて2位だったんですよね。悔しくて、でも楽しくて、3年生のときに柏のクラブに誘っていただいて始めたのがきっかけでした」

――以前ご両親に伺ったところ、最初はかなり嫌々だったとか。

「嫌でした(笑)。土日稽古で朝早いし、休みじゃないみたいだったので。それでも中1まで続けたんですが、中2のときにちょっと反抗期に入って、辞めようかなって一回相撲から離れた時期があったんですね。でも中3に上がる前に無理矢理連れ戻されて、また相撲を取るようになって。ただ、ちょっと離れていた分、相撲の面白さにもう一度気づいたんです。中3になってからクラブで稽古して、都道府県大会で団体3位とか、結果にもつながりました。やっぱり相撲が楽しかったんですね。それで、先代の師匠(元関脇・舛田山)に誘っていただき、力士になろうって決めました。あらためて相撲の面白さを感じられたので、それがたぶん相撲界に入るきっかけになったのかなと。一度離れたのが逆によかったかもしれないです」

――紆余曲折を経て、いまの関取があるのですね。現在、食事などのこだわりはありますか。

「好き嫌いは一切ないんですが、唯一痛風を出さないように魚卵をあまり食べないようにしています。本当は好きなんですよ(笑)。たくさん食べるとダメなので、本当に一口二口。好きな食べ物はカレーうどん。いままでは生姜焼きって言ってたんですけど、あらためて考えたら、カレーうどんだなと思って」

――普段、どこでどんなトレーニングをしていますか。

「場所は稽古場と家です。ジムは行かないかな。1日でも空けるとサボり癖がついちゃうので、とにかく毎日やることにしています。継続が大事なので、疲れていようと自分自身が決めたトレーニングは毎日します。ダンベルは使わないで、自重やウォーターバッグを使った体幹トレーニングをしています。あとは稽古でずっと四股を踏み続けていますね」

部屋の合併により、大関・貴景勝から刺激

――2016年4月に、先代から現在の師匠(元小結・隆三杉)へ代替わりし、18年10月には旧・貴乃花部屋と合併。そこから同部屋になった、部屋頭である大関・貴景勝関からは、日々どんな刺激を受けていますか。

「こんなに近くで大関のことを見られてありがたいと思います。大関という地位は甘くないんだな、厳しいなというのも近くで見て感じますし、本当に一緒の部屋になれて幸せです。部屋はいろいろあったけど、結果いい方向に向かっていてよかったなと思います。合併に関しては、本当にいい面ばかりですね。出稽古がなかなかできない状況でも、うちには大関もいますし、いつも充実した稽古ができていたと思います」

――新型コロナウイルスの影響で、出稽古がしばらく禁止になっていましたが、ようやく今場所から再開されました。今後出稽古の予定はありますか。

「いえ、まだどこにも行っていないし、これからもあまり考えていません。どこの部屋からもちょっと遠いけど、もし誰か来てくれるならすごくありがたいです」

――常盤山部屋は、昨年2月に台東区橋場からここ板橋区前野町へ移転してきてきました。1年以上経っていかがですか。

「もう慣れました。この前、若い衆が近くの中学校に綱引きをしに行っていましたし、今後地域でそういう交流が増えればありがたいですね」

――コロナ禍では何をしていましたか。

「もともと音楽を聴くのと店を探すのが好きで、コロナで行けなかったけど、近くのラーメン屋さんとか美味しいお店を探していました。あとは、アニメ・映画鑑賞ですかね。『進撃の巨人』とか、いまは『ワンピース』が盛り上がっています。特に角界では『ワンピース』好きな力士が多いですよ」

――たくさんお話を聞かせていただきありがとうございました。最後に、来場所の目標をお聞かせください。

「5月に11番勝てたので、この勢いのまま7月も二桁勝って、もちろん優勝も狙いたいです。自分らしい前に出る相撲が取れればいいなと思います」

【プロフィール】

隆の勝 伸明(たかのしょう・のぶあき)

1994年11月14日生まれ。千葉県柏市出身。小学1年生のときに柏市の相撲大会に出場し、準優勝。3年生から柏相撲少年団に入り、本格的に相撲を始める。全国中学校相撲選手権に、千葉県代表団体戦メンバーの1人として出場。中学卒業後、千賀ノ浦部屋に入門し、2010年5月場所に初土俵を踏む。17年9月場所、東幕下3枚目で6勝を挙げ、悲願の新十両に昇進。18年9月で幕内に昇進し、20年11月場所で新三役(関脇)。先の5月場所では、中日に照ノ富士を下し、自身初の金星を獲得。最後まで優勝争いに絡み、11勝4敗で初の殊勲賞を受賞した。最高位は西関脇。身長185cm、体重170kg。得意は押し。

【著者プロフィール】

いいづか・さき

1989年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーランスのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)、『IRONMAN』(フィットネススポーツ)、Yahoo! ニュースなどで執筆中。

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