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朝乃山(前編):大関昇進決めた春場所「チャンスは何回も巡るもの」

2020年6月23日 11:45配信

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日本の伝統文化を色濃く継承する、華やかな大相撲の世界。力士たちは皆、なぜこの道を志し、日々土俵に向かっているのだろうか。本連載コラムでは、さまざまな人気力士たちにインタビューし、その素顔を探っていく。

先の5月場所は、新型コロナウイルスの影響で残念ながら中止となってしまった。今回は、その前の3月場所で活躍し、新大関へと躍進した朝乃山関にご登場いただく。新大関となったいま、無観客開催の3月場所と思い出の初優勝を振り返ってもらった。

(聞き手・文・撮影=飯塚さき)

無観客開催の3月場所と中止決定の5月場所

――昨今のコロナウイルス感染拡大により、角界にも大きな影響が及んでいます。現在の稽古や生活の様子は、いかがでしょうか。

朝乃山関(以下、「」のみ)「申し合いやぶつかり稽古は、もうやっています。まずは基礎運動をしてから、通常の稽古をする流れです。とはいえ、まだまだ油断ならない状況ではあるので、用事がないときには外に出ないようにしています」

――東京・両国国技館で行われる予定だった5月場所は、残念ながら中止となってしまいました。

「3月の大阪場所は無観客で開催しましたが、東京のほうが感染者数は多く、緊急事態宣言も出ましたし、中止は仕方ないと思います。東京オリンピック・パラリンピックも中止で、ほかにもいろんな競技が中止になっているなか、大相撲だけ開催するわけにはいかないと思っていましたから。最初は、2週間の延期と聞いて、その初日に合わせて体を作るだけだと思って稽古に励んでいましたが、早めに中止の決断が出されたのは、むしろ助かりました。ギリギリに決定するよりよかったし、ほかの力士たちも安心したと思います」

――無観客で開催された大阪場所は、率直にいかがでしたか。

「初日は全然慣れませんでした。土俵入りが特に、違和感がありました。土俵に上がるときは一人一人四股名を呼ばれますが、通常では歓声や拍手があって、人気力士ほど会場が沸くので、それらがないのは不思議な感覚です。自分たちの力が発揮できるのは、これまでの努力もありますけれど、やっぱり普段から応援してくれているお客さんや両親、友達、先輩後輩たちがいるからこそです。皆さんの応援があったから、ここまで来ることができたと思っています。そんなことを、改めて感じずにはいられない場所でしたね。いずれ通常開催が戻ると信じているので、次に会場で応援してもらったときには、またいろんな感情が出てきそうです」

3月場所後に大関昇進!巡ってきたチャンス逃さず

――3月は異例の場所ではありましたが、大関取りで見事11勝を上げ、新大関昇進を決めました。改めて、おめでとうございます。心境はいかがですか。

「場所後に大関昇進が決まったことはすごくうれしかったです。ファンの方からは、早く大関の姿を見たいという声をいただいていますが、それはコロナウイルスが収まって安心して見られる日が来てからと思っています。次の7月場所は無観客になるかもしれませんが、自分は2回目なので、前回の経験をもって臨めると思っています」

――春場所は、大関取りのプレッシャーがあったでしょうに、とても落ち着いて取組に臨まれていた印象があります。実際はいかがでしたか。

「やっぱり、プロに入って目指すのは、大関や横綱の地位です。自分は、幕内下位で行き来した時期がありました。そのときは、気持ちに余裕がないというか、勝ちたい気持ちばかりが先行していたんです。勝ちたい気持ちは出していてもいいけれど、それだと肩に力入りますし、どこかに落とし穴があります。その点で、春場所は勝ちたい気持ちをもちながらも、落ち着いて自分の相撲を取り切ることができたと思います。大関取りというプレッシャーももちろんありましたが、周りが騒いでいても、それに惑わされないよう雑音を耳に入れず、自分の相撲を取り切ることだけ考えてやりました。それに、もし春場所で失敗しても、それ1回でチャンスは終わらない、チャンスは何回も巡るものだと思っていましたから。内心は、もちろん1発で決めたかったけど、とにかく先のことは考えずに、15日間落ち着いてやろうと決めて、それができました」

思い出の初優勝 トランプ大統領と対面も

――これまでの土俵人生で、特に印象に残っている場面はありますか。

「初優勝した去年の5月場所で、14日目に当時の大関・豪栄道関に勝ったときです。結果として、その日に優勝が決まりました。あの1番で人生が変わったかもしれません。自分はいつも14時前に場所入りして、昼頃に決まっている次の日の対戦相手を見ます。翌日の対戦相手が豪栄道関と見たとき、思い切っていくしかないと心の中で決めました。土俵下で待っているときは緊張していましたし、いざ土俵に上がったら、余計なことを考えないで自分の相撲を取り切ることだけを考えていました。挑戦者という気持ちをもっていたんです」

――落ち着いて見える朝乃山関でも、やっぱり緊張するんですね。

「しますね。あの場面は特に。初めて結び前で取ったということもありましたから。それに、地方場所に比べると、国技館はたくさんお客さんが入って密集している感じがします。お客さんが近くにいる感覚で相撲を取っているので、より一層緊張しました」

――千秋楽では、トランプ大統領が安倍総理大臣と共に観戦に訪れていました。

「自分は、トランプ大統領が来ることすら、いつ来るのかも知りませんでした。千秋楽の土俵入り前に、若頭から『取組後に大統領が来る』と聞いて知りました。でも、やっぱり優勝した人の取組を見たいということで、急遽取組前に来ることになったそうです。だから、勝ちたかったですけどね」

――そうだったんですね。あの日は本当に、会場が異様な雰囲気でした。表彰式で大統領を目の前にしたときは、いかがでしたか。

「なんというか、言葉になりませんでした。というか、その前の安倍総理のときから緊張していました。大統領は本当に大きくて、身長は僕より少し高かったと思います。みんなざわざわしていて、本当に異様な空気でしたよね」

【プロフィール】

朝乃山英樹(あさのやま・ひでき)

1994年3月1日生まれ。富山県富山市出身。小学4年生からハンドボールと並行して相撲を始め、中学生から相撲部で本格的に取り組む。卒業後、富山商業高校に進学。3年時に選抜高校相撲十和田大会で準優勝。卒業後は近畿大学経営学部に進学。4年時、2015年の国体で団体優勝に貢献、成年の部で4位。全日本相撲選手権大会でベスト4の成績を収め、三段目付出資格を取得。高砂部屋への入門を発表し、翌16年3月場所で初土俵を踏む。1年後には新十両に、さらに9月場所には新入幕と、とんとん拍子に番付を上げた。以後幕尻で低迷するが、19年5月場所、12勝3敗の成績で幕内最高優勝を果たし、ドナルド・トランプ大統領から「アメリカ合衆国大統領杯」を授与された。さらに、大関取りであった今年の3月場所で二桁勝利を挙げ、新大関に昇進した。身長188センチ、体重172キロ。得意は右四つ、寄り、上手投げ。

【著者プロフィール】

飯塚さき(いいづか・さき)

1989年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーランスのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(報知新聞社)、『IRONMAN』(フィットネススポーツ)、Number Web(文藝春秋)、Yahoo! Japanなどで執筆中。

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