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インタビュー

北勝富士(前編):好調の理由はメンタルトレーニング!先場所の好成績の秘密に迫る

2020年12月18日 10:52配信

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日本の伝統文化を色濃く継承する、華やかな大相撲の世界。力士たちは皆、なぜこの道を志し、日々土俵に向かっているのだろうか。本連載コラムでは、さまざまな人気力士たちにインタビューし、その素顔を探っていく。

今回登場していただくのは、先の11月場所で11勝4敗の好成績を収めた北勝富士関。来年は返り三役と、さらにその上の地位を目指して奮闘していく。そんな北勝富士関に、先場所の振り返りを含む土俵上のお話を、電話で伺った。

(聞き手・文・撮影=飯塚さき)

好調の理由は「メンタルトレーニング」

――先の11月場所では、11勝4敗の好成績を収められた北勝富士関です。振り返ってみていかがですか。

北勝富士関(以下、「」のみ)「11月はもともと九州場所ですが、東京開催になってしまいました。残念な気持ちももちろんありますが、ずっと妻と一緒に東京で暮らせていたので、食事からメンタル面まで、日常生活を支えてもらって、いい状態で臨めたのが一番よかったかなと思います。自分にとっては、やっぱり東京が一番やりやすいですし、物理的な距離も近いので、環境に変化がなく、波がない状態できたのがよかったです」

――今場所の北勝富士関は特に、気合が乗っているように見えました。同年代のライバル力士たちの活躍を見て、奮い立った部分もあったのではないでしょうか。

「一場所一場所大事に、気持ちを入れてやっていますが、特に正代関や朝乃山関など、同じくらいの年代で学生出身の力士が優勝したり大関になったりしているのを見て、悔しい気持ちがありました。“次は俺が”という思いが日に日に強くなっているので、そこが一番鼓舞されているところかなと思います。大勝ちした次の場所は負けちゃうことが多いので、この11勝を次の場所につなげて、次も大勝ちできるように、連続で勝ち越したい。その点で、大事なのは次だなと思っています」

――奥さまの支えとライバル力士たちの活躍。ほかに、今場所の好調の要因はありますか。

「実は、いわゆるメンタルトレーニングを始めました。専属のトレーナーさんと話しながら、自分のなかでのジンクスやルーティーンを少しずつ変えていっています。自分はもともと、思考がガチガチになるタイプで、例えば、これを食べて勝てたから、次もこれを食べれば勝てるとか、このパンツを履いていって勝てたから次も…とか、いらないことを考えてしまいます。それで、あれもしなきゃこれもしなきゃと、自分で自分の首を絞めて、自分のなかで勝手に鎖をつけていた感じでした。それを徐々に外していったら、どんどん気持ちも楽になっていって今回勝てたので、いままで考えていたことは関係なかったんだと知ることができました。同時に、稽古やトレーニングなど、やるべきことはしているので、そこをもっと自信に変えることができた。いままで自分が考えていたことがばからしくなってきて、そのなかで新しいものが見えたので、のびのびと相撲が取れました」

――なるほど!そう聞いて、今回のご活躍がより腑に落ちた気がします。邪念を払って、生き生きと戦えていたんですね。逆に、見えてきた課題は何かあるんでしょうか。

「立ち合いのスピードと低さ、そしてそこからのもう一歩目です。圧力をもっとかけたいし、当たってからの攻めが少し遅いので、一歩目・二歩目を大事にしたい。そのためには、稽古に加えて、二部練習のような形で、外で走ったりもしています。相撲だけじゃなく、ほかのところでも強化していきたいです」

強みを生かす稽古とトレーニングの工夫

――北勝富士関が、ご自身でこれからも伸ばしていきたい強みは、どんなところですか。

「下半身の低さや粘りです。引かれても落ちないのが自分のなかの強みですが、自分の体勢が低いから相手は引いてくるのであって、そこをもっと伸ばしていったらいいと思います。体勢の低さで、引かれても落ちないように、稽古では意識してやっています」

――北勝富士関は、学生時代から、稽古だけでなくウエイトトレーニングにも熱心に取り組んできました。最近は、どのようなトレーニングをしているんですか。

「実は、いまのトレーナーさんから、1年くらい前に“ダンベル禁止令”が出されまして(笑)。最近は、重いものをたくさん持つよりも、自重やチューブなどで鍛えることを中心にやっています。事実、トレーニング内容を変えてから、体の張りや痛みがなくて楽だし、相撲の切れもよくなって、いい成績につながりました。トレーナーさんのおかげで、使える筋肉をつくらないといけないという部分に気づけたのは、とてもよかったと思います。高校生・大学生の、もっと早くに知っていればよかったなって後悔もありますが、それも経験ですね。いま、相撲をやっている5年生の甥っ子には、いまある自分の知識を教えているので、これからもっと強くなりますよ」

――それも楽しみですね。現在のトレーナーさんとの出会いが、関取の相撲人生において大きなものだったんですね。

「はい。名古屋で接骨院を営む山口泰輝(ひろき)さんという方です。出会いは偶然でした。休場した次の場所が名古屋だったので、知り合いだった山口先生に診てもらったところ、すごくよくなって、そこからのお付き合いです。山口先生を含め、奥さんもそうなんですが、自分の出会いには偶然が多くて、それをすごく大切にしています。人生、何事も導かれるようにうまくできているんだなと、つくづく思いますね」

研究熱心な一面 金星も多数獲得

――普段、相撲の研究はどのようにされていますか。

「自分の取組だけじゃなくて、昔の力士の映像を見て、この人のここがいいなあとか、こういうところが大事なんだなとか、勉強しています。いいなと思ったことは、実際に稽古場でやってみることも多いです。映像は、YouTubeにいっぱいアップされているので、参考にしています」

――例えば、どんな人の取組を見ているんですか。

「時代的に、朝青龍関や栃東関、若い頃の白鵬関はよく見ます。特に、皆さんのスピードやうまさ、低さの部分をよく見て研究しています」

――昔の力士で、対戦してみたい力士はいますか。

「(師匠・八角)親方が、現役でバリバリのときにやってみたかったですね。稽古の鬼といわれていたので、どれだけ強かったんだろうと思います。それと、子どもの頃から相撲をやってきて、やっぱり貴乃花関と朝青龍関はヒーローの位置づけだったので、対戦してみたいというか、永遠の憧れですね」

――いま挙げられたどの力士の皆さんも横綱ですね。北勝富士関も、これまで6つの金星を獲得してきています。

「子どもの頃からテレビで本場所の土俵を見ていたので、自分が最後の一番で取ったり、まして勝ったりしているのは、本当にいまでも信じられないです」

(第22回・後編へ続く)

【プロフィール】

北勝富士大輝(ほくとふじ・だいき)

1992年7月15日生まれ。埼玉県所沢市出身。小学2年、3年次にわんぱく相撲で準優勝し、4年生から入間少年相撲クラブで本格的に相撲を始める。高校は埼玉栄に進学し、3年次に高校総体で優勝。日本体育大学体育学部武道学科進学後、2年次に東日本学生相撲個人体重別選手権135キロ以上級と全国学生相撲選手権大会で優勝し、大相撲の幕下15枚目格付出資格を獲得。しかし、卒業を待ったことと4年次にタイトルが獲得できなかったことで、付出資格を失った。八角部屋に入門し、2015年3月場所で前相撲から初土俵を踏む。翌年7月場所で新十両、11月場所で新入幕と、前相撲からわずか10場所で新入幕のスピード出世を果たした。2019年3月場所で新三役。東前頭4枚目で迎えた先の11月場所では、11勝4敗の好成績で、返り三役への望みを残した。身長185cm、体重166kg。得意は押し。

【著者プロフィール】

飯塚さき(いいづか・さき)

1989年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーランスのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(報知新聞社)、『IRONMAN』(フィットネススポーツ)、Number Web(文藝春秋)、Yahoo! ニュースなどで執筆中。

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